5年前(当時二十歳)私は家族とギリシャ、キプロスに行きました。
なぜこれらの国を選んだかと言うと、私は海外旅行の経験がなく飛行機に乗るのさえ緊張してしまうのですが私以外の家族
(父、母、兄)は三人とも仕事や趣味で海外に行く回数が多く、「定番の国はつまらない!
もっと異国の地でのドキドキを味わいたい」と言いあまり日本に馴染みのないギリシャとキプロスが選ばれることとなりました。
ギリシャでは数々の遺跡や美術館を見に行きましたがキプロスは海に囲まれたリゾート地。
私たちが行ったのは3月だったため、繁華街で買い物や海鮮料理を楽しみました。
そして、観光の計画を立てる中「北キプロス」に行こうと言う話になりました。
北キプロスはキプロスから独立を宣言したトルコ領です。
国際的に国家として認められているわけではありませんが、キプロスからの支配は受けていません。
私は南キプロスの住人と仲が悪く危険なのでは?と思いましたがそんなことはありません。
北側と南側は自由に行き来できますし、北側の方が物価が安いからと南キプロスの住民も買い物に行くほど平和な関係なのです。
しかし独立国家を名乗っていますので、「入国」のためのゲートはしっかりあります。
美術館のチケット売り場のようにガラス越しに警察官(多分)の方が座っており私たちは家族4人分のパスポートを一度に渡しました。
国際的に「国」と認知されていない南キプロスはパスポートに直接スタンプを押すことはできないので、
入国のスタンプを押した紙をそれぞれのパスポートにはさむことで入国審査を通った証となります。
南キプロスに入った私たちは商店街のような通りで民芸品等を買い、危険なことも差別的な言葉を言われることもなく観光を楽しむことができ、とても良い場所だと思いました。
そろそろ帰ろうと今度は出国のゲートを通ろうとすると、男性の警察官がパスポートを見て怪訝な表情になりました。
私のパスポートだけ、入国スタンプの紙が挟まっていなかったのです。
家族4人分いっぺんに渡しいっぺんに返されたのでひとつずつ確認もしていなかったのですが、どうやらスタッフの方が私のパスポートにだけスタンプを忘れたようです。
私は眉間にしわを寄せる警察官にただ怯えるばかりでしたが、英語の得意な母が入国の側にいる人を指さし、
「あの人に4人一緒にチェックしてもらったから、私たちを覚えてるか確認してくれ」と説明し、しばらく4人とも出国ゲート手前で待たされることになりました。
まさかの事態に兄が、私だけ密入国者として家族と引き離されトルコに送られるのでは?
なんて冗談を言いましたがそのときはあまり笑えませんでした。
しばらくすると入国で私たちの担当をした方がおいでになり、
「この観光客はたしかに4人で来た。私がスタンプを1人だけ押し忘れた」と言ったため無事4人とも出国を許可されました。
アクセサリーひとつ付けない日本人の家族グループは、危険人物には見えなかったのでしょう。
他の家族は入国、出国のスタンプが押された2枚の紙を私は出国の証1枚だけを日本に持ち帰り正に異国の地でドキドキを味わった旅になりました。